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Translational Medicineプレスリリース

Embargoed Advanced Information from Science Translational Medicine The Weekly Online Journal of the American Association for the Advancement of Science http://www.aaas.org

報道解禁日時:米国東部標準時 2009年10月7日(水)午後2:00

問合せ先:Natasha Pinol +1-202-326-7088 npinol@aaas.org

Science Translational Medicine創刊号
―乳がん検査や骨粗鬆症治療薬などへの応用が期待される研究成果を紹介

基礎研究の成果を医療現場で積極的に応用することを目指す新しいジャーナル、Science Translational Medicineが創刊を迎えます。創刊号では、乳がん検査の向上が期待される、微量エストロゲン検出用マイクロ流体デバイスなどの研究成果をご紹介します。

Scienceの発行者である非営利団体、米国科学振興協会(AAAS)が創刊するScience Translational Medicineは、人々の健康と生活の質(QOL)の向上をもたらす可能性がある優れた科学に焦点をあてています。原著研究論文をはじめ、専門家による解説をご紹介する創刊号は、2009年10月7日発行です(www.sciencetranslationalmedicine.org)。

Science Translational Medicineのチーフ科学アドバイザーを務めるの は、米国立衛生研究所(NIH)の前所長であり、現在、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団のグローバル・ヘルス・プログラムのシニアフェローである Elias Zerhouni, M.D.です。また、トランスレーショナル医療の第一線で活躍する専門家らで構成される諮問委員会の下、Katrina Kelnerが編集長の任にあたります(http://stm.sciencemag.org/info/)。

ポケットサイズのデバイスで乳がんを検出


創刊号を飾るのは3報の研究論文です。カナダ、トロント大学のNoha A. Mousaらによる論文のテーマは、小型チップを使った微量エストロゲンの測定です。従来の検査法と比較して、同チップでは、数千分の1の量の血液または 乳房組織検体からホルモンを抽出することができます。今回の発明により、乳がんリスクの評価あるいは乳がん治療のモニタリングのための、迅速かつ簡便な定 期検査が実現する可能性があります。さらに、性ホルモンを頻繁に測定する必要のある不妊症などのさまざまな症状や疾患にも恩恵がもたらされるでしょう。同 デバイスの基礎を成すのは、パイプやバルブを使わず、液状検体のわずかな液滴の挙動を制御する高度なデジタルマイクロフルイディクス技術です。

液滴は、クレジットカードよりも小さなチップ上で電気誘導されます。乾燥した組織検体は液滴で溶解され、2次液槽へと送られます。同槽で液滴を循環させ、不純物や他の生物学的成分を除去し、エストロゲンのみを抽出します。その結果、より純粋なエストロゲンが得られます。

Mousaらは、乳がん患者2例の乳房組織検体からエストロゲンを抽出し、一連の分析を経て、組織中のエストロゲン量測定 に成功しました。乳房組織中のエストロゲン量の測定は、乳がんを発症する危険性のある女性の特定に役立つと思われます。しかし、従来の検査法では多量の乳 房組織を採取する必要があり、痛みを伴うと同時にコストがかかるため、定期的な測定には至っていませんでした。研究者は、今回開発された「ラボ・オン・ チップ」デバイスを用いて、乳房組織中のエストロゲン量測定について研究することができるでしょう。

Science Translational Medicine創刊号ではさらに、免疫学ならびに骨粗鬆症治療薬開発における研究成果をご紹介します。

免疫攻撃に対する新たな武器


ダナ・ファーバーがん研究所のJeff K. Daviesらは、骨髄移植後の移植片対宿主病(GVHD)から患者を守る新しいメカニズムを突き止めました。GVHDは、ドナーの免疫細胞がレシピエン トの身体を攻撃することで生じ、重篤な臓器障害を引き起こします。Daviesらは、過去に実施したヒト試験の被験者について新たな知見を報告していま す。これらの試験において、Daviesらは、GVHDを軽減するために、レシピエントへの移植前に、特殊な方法を用いてドナー骨髄細胞を処理しました。 このような処理は、ドナーが理想的な適合者ではない場合にも行われました。

T細胞とは、免疫防御を調整し、免疫防御に関与する血液細胞です。ある種のT細胞がGVHDを引き起こす一方で、他のT細胞は感染やがんから身体を守りま す。現在、GVHD予防として、ドナー骨髄中の破壊的T細胞を殺すという方法があります。しかし、この方法では保護的なT細胞も破壊されてしまいます。そ の結果、しばしば合併症が引き起こされることから、これは潜在的に危険な方法です。Daviesらの試験では、根本的に異なる方法が用いられました。 Daviesらは、ドナーT細胞を移植する前に細胞を殺すのではなく、操作することでGVHDを引き起こす可能性のある細胞の増殖を防ぎました。処理され たドナーT細胞の移植を受けた患者では、通常のドナーT細胞移植を受けた患者と比較してGVHDの重症度がより低く、また、より迅速に免疫系が回復しまし た。

Daviesらによると、処理された骨髄細胞の移植を受けた患者において、制御性T細胞と呼ばれる特定の免疫細胞が、移植後数カ月で著しく増加しました。 これらの細胞を精査した結果、制御性T細胞が、GVHDを引き起こすT細胞を特異的に抑制できることが明らかになりました。Daviesらの知見から、こ の種の骨髄移植後、制御性T細胞が実質的にGVHDを制御する役割を担うことが示唆されます。Daviesらがドナー骨髄細胞を処理した方法で、自己免疫 疾患などの疾患の治療に制御性T細胞を適応させることができる可能性があります。

よりよい骨の形成は綱渡り


私たちの骨は生涯を通して常にリモデリングされ、破壊と再形成の微妙なバランスの下に維持されています。デューク大学メ ディカルセンターのDiane Getsy-Palmerらによる試験から、よりよい骨粗鬆症治療薬への方向性が示されています。Getsy-Palmerらは、マウスにおいて、骨分解 のマイナス影響を受けることなく、骨成長を促進することに成功しました。骨芽細胞が骨を形成するのに対し、破骨細胞は骨を溶かします。これら両細胞は骨リ モデリングの調節因子です。本来は、副甲状腺ホルモンによってこれら細胞のバランスが保たれます。再形成があまりにも少ない場合、丈夫で健康な骨を維持す る従来の均衡が崩れ、骨は脆く、弱くなり、骨粗鬆症などの疾患に至ります。

骨粗鬆症の治療には、しばしばビスフォスフォネート製剤が使われます。同剤は骨量の減少を防ぎますが、その一方で骨の微細構造を弱めてしまうため、使用が 長期にわたると骨折が発生しやすくなります。骨芽細胞を直接刺激する副甲状腺ホルモンを1日1回注射することで、骨の微細構造を強化することができます。 しかし、同ホルモンには破骨細胞を間接的に刺激する作用もあります。また、破骨細胞による破壊によって、誘発された骨成長が逆転するのを防ぐために、毎日 注射しなければなりません。

Getsy-Palmerらは、バイアスアゴニスト(biased agonist)と呼ばれるクラスの薬剤の作用が骨成長に関与すると報告しています。Getsy-Palmerらの試験において、副甲状腺ホルモン受容体 に選択的に結合するPTH-barrと呼ばれるバイアスアゴニストを投与したマウスで、骨形成の有意な増加が認められました。同試験の結果により、同クラ スの薬剤は、標的となる受容体の悪影響ではなく、好ましい影響のみを誘発することが示されました。同試験では、骨成長を誘発すると同時に、骨破壊の好まし くない影響が最小限に抑えられました。これは骨粗鬆症治療薬の改善に向けた重要な要素です。さらに重要なことに、バイアスアゴニストが作用する受容体の種 類は、一般に使われている多数の心疾患治療薬、降圧剤および鎮痛剤が標的とする受容体の種類と同じです。したがって、これらのバイアスアゴニストは、まっ たく新しい世代の、よりよい処方薬をもたらす可能性を秘めています。

トランスレーショナル医療とは?


トランスレーショナル医療はしばしば、研究室から医療現場(from bench to bedside)へと科学的知識を移行する取り組みと称されます。トランスレーショナル医療では、基礎研究(細胞培養や動物モデルなどを使った生物学的過 程の研究)の成果を基に、新しい治療法または医学的処置を開発します。

トランスレーショナル医療は、これまで以上に学際的になりつつあります。たとえば、研究者は、コンピュータを使った新しい方法で、ゲノミクスなどの分野か ら押し寄せる膨大なデータに対処する必要があります。また、物理学や材料科学における新たな進歩は、医学的な症状の研究や診断に向けた新たなアプローチを もたらすでしょう。

Science編集長のBruce Albertsは、「Science Translational Medicineを 創刊する目的は、さまざまな分野で得られた新しい知見へのより効率的なアクセスとその応用に向けて、研究者を支援することにある」と説明しています。同 ジャーナルは特に、大学、政府機関およびバイオテクノロジーならびに製薬業界の研究者と管理者、医師兼科学者、規制関係者、政策立案者、投資家、事業開発 者、および資金提供機関のみなさまのお役に立つでしょう。

「現時点では複数の情報源から入ってくる情報が、Science Translational Medicineを通して効率よく吸収する ことができるようになるため、研究者や技術者は、患者ケアの向上というより大きな目標に向かって邁進できるでしょう。人々のQOL向上につながる可能性を 秘めた情報が、ごく限られたチャンネルを通してしか入手できないことがあまりにも多すぎます。たとえば、専門家会議に出席し、基本的な心臓病学の文献を読 むだけで、物理学やコンピュータサイエンスの文献には目を通さない心臓専門医は、自身の研究を進展させる可能性のある重要な画期的発見を見逃すことになる かもしれません。Science Translational Medicineはあらゆる分野を網羅し、研究者のみなさまに最新の情報をお届けします」と、Albertsは述べています。

また、編集長を務めるKatrina Kelnerは「Science Translational Medicineは、研究室と医療現場の間に、双方向の情報の流れを実現するでしょう。多様な関係者が継続的にフィードバックや意見交換を行うことで、成功がもたらされると私たちは確信しています」と述べています。

報道関係者のみなさまには、Science Translational Medicineに掲載される論文の見本刷を入手していただけます(報道解禁日時を設定しています)。詳しくはScience Press Package Teamまでお問い合わせください(電話:+1-202-326-6440、Eメール:scipak@aaas.org)。

1848年に創設された米国科学振興協会(AAAS)は、世界最大の総合科学機関として、Science誌を発行しています。AAASは、約262の関連科学機関・学術団体、およそ1,000万の皆様にサービスを提供しています。今日、Science誌は、ピアレビューのある総合科学誌として世界最大の発行部数を誇り、購読者数は総計約100万人にのぼります。非営利団体であるAAAS(www.aaas.org)は、科学政策におけるイニシアチブ、国際プログラム、科学教育などを通して「科学の進歩と社会への貢献」を実現すべく、すべての人々に門戸を開き、その使命を果たしています。最新の研究ニュースは、AAASが提供する科学ニュースホームページ、EurekAlert!(www.eurekalert.org)にて閲覧いただけます。