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Editorial by AAAS Chief Executive Officer Rush Holt: サイエンスに今何が起きているか?

What now for science?

サイエンスに今何が起きているのか?

2016年の米国大統領選挙が科学にとってどういう意味があるのか。不確かな現実に直面したわれわれは、米国の科学的活動の健全さが大統領という特定の人間の態度よりはるかに多くのものに依存していることを理解し、少し安堵しているかもしれない。連邦議会の議員や連邦政府、州政府、地方、国際関係省庁で働く人々もまた、政策を作成し、集合すると大統領一人だけより多くの面でより大きな影響力を与える一団になることを忘れてはいけない。大統領をはじめ一般市民が科学による強力な恩恵を理解し、科学的インプットに基づく意思決定は成功しやすいことを理解することが重要となる。

リーダーシップ移行準備中の今、大方の科学者にとって目前にある疑問は、科学行政機関への今後数年の連邦政府助成金である。この点で、現実に不明なことは少ない。議会は数年前から、「強制歳出削減(sequestration)」の道をたどってきた。議会の多数派に実質的な転換がなければ(実際なかった通り)、科学資金をはじめとする自由裁量資金への予算配分は減額されるであろう。したがって、逆転が望まれた可能性はあるものの、常にそのようなことは起こらなかったように、選挙は趨勢を変えていない。

より不透明なのは、新政府において科学助言が果たす役割である。経済発展を促進し、それにより国民生活を向上させたいという、トランプ次期大統領の望みは、科学や技術、イノベーションに加え、有能な労働者を育成する教育制度なしには実現できない。トランプ氏が賢明であれば、尊敬される科学者か技術者の科学顧問を指名するであろう。科学顧問は、感染症対策のような明快な科学関連トピックスのみでなく、外交、サイバーセキュリティー、農業、先進的製造(advanced manufacturing)、インフラ強靭化など、科学と技術が深く関わる多くの課題について、最上級の意思決定過程に完全に組み込まれるべきである。

研究資金や科学に関する助言を越えて、科学的活動の健全性を決定づけるより多くのものがある。データへのフルアクセスや研究者の自由な往来が可能な共同研究に、米国は他国と加わるだろうか。政府機関のいたるところに科学者が指名されるだろうか。政府系科学者が、自分の研究について自由に話せるだろうか。規制当局では、確認された科学的発見に政治的影響を上回る優先権が与えられるだろうか。民間および公的部門で財政政策や税制政策が科学基盤の活動に報いるだろうか。

非常に重要なことだが、次期政府はエビデンスに基づくのだろうか。ここ数十年にわたり、米国政府内でみられた不穏な風潮は、イデオロギーの主張がエビデンスを押しやることであった。この風潮は今年の選挙運動で加速し、トランプ候補者は立証されていない、あるいはすでに受け入れられている科学的事実と矛盾するような発言を行った。次期政権内に科学的研究の実践や発見をよく理解しているメンバーはいるのだろうか。

科学者は何をすべきなのか。170年近い伝統にのっとり、米国科学振興協会(AAAS)は、科学は十分にかつ積極的に公共政策の作成に組み込まれるべきと力強く提唱する。科学は、政治的にパルチザンであるべきでない。研究の経済的、技術的利益が政治的立場の異なる市民にアピールしているとすれば、科学は異なるものの架け橋になることができる。科学者の開放的で率直なコミュニケーションは、政治家には歓迎されないかもしれないが、科学界は関連するエビデンスについて最もよく理解していることを明確に率直に謙遜せずに示さなければならない。気候変動や銃による暴力、オピオイド依存、漁業資源の枯渇、その他研究で明らかになった公共の問題について、なかったことにすることはだれにもできないことを明確にしなければならない。

今回の選挙は政界の既成勢力への拒絶だったと言われている。我々は、それを既成の事実への拒絶にしてしまってはいけない。トランプ大統領が、候補者であった頃より、事実に敬意を払い、仮説なのか主張なのか、注意深く公平に調査する過程にもっと注意を払うよう願っている。

Rush Holt, Chief Executive Officer of AAAS and Executive Publisher of the Science journals